【レビュー】「LG V60 ThinQ 5G」は型落ちでもハイエンド相応のスマホなのか?

Android

伊藤忠グループの「にこスマ」で1.8万円だったLG V60 ThinQ 5Gを買ってしまいました。買うつもりはなかったのですが…Snapdragon 865&今はなきLGハイエンドが1.8万円の魔力に負けました…。

ググっても当時の古い情報しかなく、Android 12アップデート後及び個人のレビューがかなり少ないため、今更ですが…せっかくなのでLG V60 ThinQ 5Gをレビューします。

この記事はソフトウェアバージョンL51A30c、LG UX 10.0更新後のLG V60 ThinQ 5Gを用いて作成しています。

スペック・仕様

LG V60 ThinQ 5G(L-51A)
OSLG UX 10.0(Android 12ベース)
SoCSnapdragon 865 5G(TSMC 7nm/N7P)
RAM8GB
ストレージ128GB
ディスプレイ6.8インチ POLED
(1080×2460/60Hz/Gorilla Glass 5)
サイズ169.3×77.6×8.9mm
重さ218g
バッテリー5000mAh(PD 3.0/QC 4+/ワイヤレス充電対応)
カメラ64MP(メイン:Samsung s5kgw1)
13MP(超広角:Samsung s5k3m5)
10MP(フロント:Samsung s5k3j1)
インターフェースUSB Type-C(USB 3.1 Gen 1)
nanoSIM+microSD(最大1TB)
オーディオステレオスピーカー
3.5mmステレオミニジャック
ESS ES9219P(Quad)
DTS:X Surround&LG 3D サウンド
Hi-Res Audio(~192000Hz)
接続規格Wi-Fi 6(802.11a/b/g/n/ac/ax:2.4/5GHz)
Bluetooth 5.1
NFC(FeliCa対応)
防水・防塵IP68
セキュリティ画面内指紋認証
備考LG V50 ThinQの後継かつ最後のLGハイエンドモデル
特定地域にのみ投入されそれぞれ型番や外部メモリの対応容量が違う
Wacom AESペン・専用LG DualScreen及び磁気充電コネクタをサポート
(スペック参考元:NTTdocomo/Wikipedia/lg.com/GSMArena)

内容物

にこスマでLG DualScreen等の付属品なし、SIMロック解除済みドコモ版のCグレード品が1.8万円でした。某お方が紹介して数日のうちに完売した模様。ググったらクーポンがあったので割引価格の1.7万円で購入。

内容物は当然本体のみ。にこスマで買うとSIMピンがおまけされてます。

とりあえずパッと見ではCランクに見えないです。

とはいえ、Cランクの理由は細部をよーく見ると確認でき、カメラ周りの塗装ハゲや下部のコネクタ穴に埃が侵入してます。まぁ…綿棒とかで掃除してケースを装着すれば気にならない程度です。…掃除したんですかね?

確認できたのはそのくらいで画面やサイドフレームに目立った傷もなく、じゃんぱらやイオシスでいう使用感のあるBランク相当に近いです。三ツ星スマホでバッテリー80%以上を謳っている通り健康状態は良好でした。

下手なBランク品よりバッテリー健康状態80%と傷なしが確約されている以上、ある意味では良品かもです。

外観

LG V60 ThinQ 5Gは大型化したGalaxy S10といった感じの外観です。BlackShark 4っぽくも見えます。

見ただけで分かると思いますが…テッカテカで反射が酷く、指紋等も目立ちます。加えて「docomo 5G」ロゴがデカデカと配置されてダサいです。正直、デカいGalaxy S10のパチモン感があり格好良くはないです…。

背面はGorilla Glass 6で、側面フレームは金属(アルミ)ボディです。MIL規格準拠の高耐久を謳うだけあってかなりガッシリしてます。

画面側から見て右側に電源キー、左側にボリュームキーとアシスタントボタンが配置されています。

本体下部にスピーカーとマイク、USB Type-Cポート(USB 3.1 Gen 1)、3.5mmステレオミニジャックがあり、上部にSIMスロットとマイクを備えています。スピーカーは受話口と合わせたステレオタイプです。

SIMスロットは本体上部にあり、nanoSIMとmicroSDカードを装着できます。キャリアモデルなのでデュアルSIMは無理。白いトレーなので防水のゴムが目立ちます。

LG V60 ThinQ 5Gの重さは概ね公称値の218gに近い217.1gでした。大型な6.8インチサイズ相応の重さです。

ケースとフィルムは過去の失敗から、安すぎない程度の物をAmazonで用意しました。

LOOFのクリアフィルムは問題なかったのですが…1090円もしたWOEXETのケースはデカい・ゴツい・ボタンが硬すぎて押せないという見た目だけのケースだったので買い直しに。薄い防御系のケースって何だよ。

怪しい495円のノーブランド品の黒TPUだと、ボタンも押しやすくシンプルかつWOEXET比でスリムになったので、これを使うことにします。Pixel 3のときは安物が駄目だったんですが、今回は逆でした…。

ソフトウェア

One UI風のLG独自UI、LG UX 10.0

LG V60 ThinQ 5Gは出荷状態ではAndroid 10ベースのLG UX 9.0をプリインストールしていましたが、LGのスマホ事業撤退後もサポートされており、docomo版にもAndroid 12ベースのLG UX 10.0が配信されています。

ソフトウェアバージョンL51A30cでは、比較的に新しめの2022/12/1セキュリティパッチが適用されていて、旧型ハイエンド機にしてはLG”の”サポートはマシなようです。

少なくとも更新を打ち切られてAndroid 10や11のままなメーカーより”は”という前提ですけどね。

LG UXはLGの独自UIで、何処となくSamsungのOne UIに似ている部分が多い印象です。独自UIなのでキャリアモデルながらそこそこ多機能です。

”便利な機能”(One UIと名前が同じ…)から、端末を最適化するマネージャー機能”スマートドクター”や対応アプリを複製して2垢運用可能な”デュアルアプリ”機能などが使えます。専用のゲーム機能も備えてます。

地味ですがノックオン機能により、画面のダブルタップでON/OFFがしっかり有効化できます。タスクキルやバッテリー節電関連は程々でセーブ機能を除外したいアプリは任意で選択可能。

クイック設定パネルはAndroid 12以前のような感じで、独自UIらしくWi-Fiとモバイルデータのパネルは分離されています。AOSPと違ってワンタップでWi-FiのON/OFFが可能で使い勝手は良好です。

またAndroid 12ながらAOSPとは違い、LG UX 10.0はデフォルトでナビバーを非表示にしたり感度調節が可能です。Material You風のアクセントカラーも設定可能。

ただ種類は少なく、AOSPのMaterial YouやColorOSのパーソナルカスタマイズほどの自由度はないです。

これに合わせてAOSPの壁紙とスタイルではなく、他の独自UIと同じような壁紙とテーマが使えます。種類はMIUIやColorOSほど豊富ではないです。

常時ディスプレイの表示内容もある程度カスタマイズ可能、ただ時計の種類はかなり少なくデジタル・アナログ時計以外はダサいです。

docomo&LG製の役に立たないブロートウェアが多すぎるクソ仕様

LG V60 ThinQ 5Gは日本だとキャリア専売で、docomoと禿(SoftBank)のみが取り扱っており魔改造されています。

デフォルトで128GB中の26.36GB(20%超え)が使用されており、docomoユーザー以外は不要なアプリや何故かTikTok、アスファルト9に加えLG製の役に立たないブロートウェアがもりもり入っています。クs。

何時も通り「ADB App Control」でブロートウェアの大半を駆除しました。数にして117で過去最多です。

私的に不要なものを全て消したのでかなりスッキリしました。

ちなみに私がかつて愛用していたHuawei P30 Pro(ドコモ版)とは違い”docomo LIVE UX”を消してもジェスチャーが効かなくなる等は発生せず、動作に問題はないのでLGのホームアプリのみにして平気です。

docomo系のアプリはガラクタどころか、通知に常駐して動作を不安定化させるウイルスなので全てアンイストールした方が良いです。

ハードウェア

大型6.8インチのPOLED

LG V60 ThinQ 5Gは大型な6.8インチのPOLEDディスプレイを搭載しています。非常にデカいです。

インカメラは過去の遺物となったドロップタイプ、ベゼルも2020年モデルとして見てもやや太めでスリムではないです。全体的に2020年モデルの割に古さを感じるデザイン。

(壁紙:https://www.pixiv.net/artworks/86181241)

配列はLGディスプレイ製のPOLEDなので十中八九”LG Display配列”です。SDC配列との見分けは付きません。

ディスプレイ大手のLG自社製ということもあり、品質は優秀で特に明るさと自然で見やすい色合いをしていて、リフレッシュレートが60Hz固定という以外は不満のないディスプレイです。

「Device Info HW」から確認できたデータではリフレッシュレートは60Hz固定、アスペクト比はあまり見かけない20.5:9、PPIは396で画素密度は高め、HDRは10~10+とHLG対応のようです。

色彩設定は割りと豊富でカスタムではRGBは勿論、彩度やシャープネスも調整可能でした。フルスクリーン時”動画の画質向上”というハードベースなのかソフトベースなのか分からない補正機能も使えます。

LG V60 ThinQ 5GのWidevineはL3でした。高画質な動画ストリーミング再生は残念ながら通常ではできません。

DualScreenや単体でも6.8インチのディスプレイを備え、謎の画質補正機能もありながら…勿体ないです。

USB 3.1 Gen 1対応のType-Cポート

LG V60 ThinQ 5GのType-CポートはUSB 3.1 Gen 1(=3.0)対応です。私的に「LG Screen+」でのデスクトップもどきやLG DualScreenへの映像出力は、恐らく”DP Alt Mode”を介した機能じゃないかなぁ…と思ってます。使わないけど。

LG V60 ThinQ 5GをメインPCのUSB 3.0ポートに接続し、サブドライブの「KIOXIA EXCERIA G2(1TB)」と5GB弱のデータを相互に転送させてみると「HWiNFO」読みでリード93MB/s、ライト162MB/s程度の速度が出ていました。

USB 2.0(60MB/s)のType-Cポートを搭載する大半のスマホよりは高速なデータ転送が可能です。

USB PD 3.0(PPS)対応(一応、QC 4+とQiも…)

LG V60 ThinQ 5GはUSB PD 3.0(PPS)とQC 4+、Qiでのワイヤレス充電に対応しています。

最大20W(9V/2.22A)のUSB PD出力に対応する「Anker PowerCore Fusion 10000」で、LG V60 ThinQ 5Gを充電したところRT-TC5VABK読みで9.110V1.483A(13.5W)のUSB PD出力が確認できました。USB PDなどの高速出力時は”急速充電”で判定されるようです。

最大45WのUSB PD 3.0(PPS)出力に対応する「Anker PowerPort Atom III 65W Slim」では、20W側のType-Cポートで9.286V2.188A(20W)、45W側のポートで9.445V2.39A(22.5W)の出力が確認できました。

20Wポートでは出力上限MAX、45WポートではLG V60 ThinQ 5Gが対応する最大25Wに近い、22.5Wで充電されているため公称通りUSB PD 3.0(PPS)対応と見て良さそうです。QC 4以降はUSB PD互換なので電圧を見ただけではどっちなのか正直、判断が難しいです。

まぁ…USB PD PPSのACアダプターは対応機をQC 4+相当で充電可能なので、あまり変わらないんですがね…。

ものの試しでUSB Standard-Aなのに、端末次第でUSB PDを吐き出したりする面白可笑しいXiaomiの120W充電器で充電したところ、USB BC1.2判定されたのかRT-USBVAC7QC読みで5.163V1.361A(約7W)が出力され”充電中”判定でした。

参考までにバッテリー残量18%から90%までUSB PD 3.0(PPS)出力だと、おおよそ1時間10分程度掛かりました。

指紋認証は十分使える

LG V60 ThinQ 5Gは画面内指紋認証にのみ対応しています。

認証されるまで指を置く必要がありますが、速度はまずまず良く精度についても画面内にしては良好な部類です。

複数登録やコンテンツロック、画面OFF時でもアイコンを表示可能、種類は少ないですが…アニメーションも3種類から選択できます。

オーディオ

オーディオエフェクト

LG V60 ThinQ 5Gはサウンド効果として、LG 3D サウンドとDTS:X Surround、Hi-Fi Quad DACでの出力に対応しています。

DTS:X Surroundはサウンド設定から非表示になっており、Activiti Launcherなどで項目を探す必要があります。

音量自動補正機能とイコライザはサウンドエフェクトと併用可能、Hi-Fi Quad DACでの出力は3.5mmステレオミニジャック出力のみ有効化できます。

Hi-Fi Quad DACでの外部出力時は5種類のサウンドプリセットと3つのデジタルフィルターを組み合わせて再生できます。左右のバランスもダイヤルで調整可能。

レイテンシーテスト

「Audio Latency Test App」でスピーカー・3.5mmステレオミニジャックの出力レイテンシーを計測しました。(オーディオエフェクトはOFF)

スピーカーではレイテンシー50ms、3.5mmステレオミニジャックでは36msでした。バッファサイズはどちらも192です。

ハイエンドモデルとして普通のレイテンシーです。普通で使用する上で不満を感じることはほぼないです。

LG V60 ThinQ 5Gのハードウェア

LG V60 ThinQ 5GはSnapdragon 865に統合された「WCD9385」とは別に、ESS Technology製の「ES9219P」をQuad構成で搭載しています。

ハードウェアレベルでカスタムできるプレイヤー「Neutron Music Player」で、LG V60 ThinQ 5Gのハードウェアを確認したところ、デフォルト設定ではスピーカー側は48000Hz(16bit)固定。

3.5mmステレオミニジャック出力では、44100Hz~384000Hz(32bit)まで選択可能でした。

ドライバー設定からHi-Res系の出力を許可すると、スピーカー側でも44100Hz~384000Hz(32bit)まで選択可能になります。

Hi-Fi Quad DACを設定で有効化した場合でも名称はLine-outのままで、対応周波数も同じでした。

恐らくWCD9385は無効化もしくはバイパスされており、Hi-Fiの有効・無効問わず「Neutron Music Player」ではES9219Pを経由していると思います。

「Neutron Music Player」から384000Hz(24bit)で再生自体は可能ですが、OPPO Reno5 Aのように最大音量にしても出力が上がらず、ノイズが混じりのジャリジャリしたような音になってしまいました。

LG V60 ThinQ 5Gで問題なく再生できる周波数は192000Hz(32bit)までみたいです。

LG V60 ThinQ 5Gを試聴する

ESSのDAC「ES9219P」をQuad構成で搭載しているということで、流石に今回は3.5mm出力にも触れておこうと思います。

いつも通り、澪ホンことK701の姉妹機であるAKG K712 PRO+MOGAMI 2893を使用して、LG V60 ThinQ 5Gで試聴。普通のスマホではインピーダンス62ΩのK712 PROをドライブできませんが果たして…。

視聴環境
試聴構成・LG V60 ThinQ 5G(ESS ES9219P)
・AKG K712 PRO+MOGAMI 2893
比較対象Google USB-C 3.5mm アダプター(Synaptics CX21986)
TOPPING L30+E30(AK4493EQ)
再生ソフトNeutron Music Player
音源MP3:44.1KHz(16bit)・ビットレート320kbps(ABR)
試聴楽曲麟躍幽岩
疾雷快雨
Nightcore – Nevada – (Lyrics)
「不安定な神様」
ガラスアゲハ

まず、ESS ES9219PのQuad構成は凄まじくスマホの3.5mm出力直挿しですが、AKG K712 PROをゲイン70~80あたりの音量で十分鳴らせます。スマホの3.5mm出力とは思えないくらいパワフル。

ES9219シリーズらしく素の特性はフラット寄りで、デジタルフィルターの切り替わりが反映されやすいように感じます。プリセットはノーマル、フィルターはベーシックが誇張ない自然な音で聴きやすいです。

音場はやや狭くK712 PROにしては頭の中で鳴っている感じで、ボーカルはやや近め。低域が深いとか高域が伸びるって感じではないですが、全音域がバランス良く鳴っていて聴き疲れしにくいです。

スマホと比較する相手じゃないですが…メインで愛用しているTOPPING L30+E30(AK4493EQ)と比べると流石に据え置きとポータブルの差を感じ、音の分離や解像感は単体DACのE30に分があり、音量はL30ほどは稼げません。

とはいえ据え置きと比べられる時点で、LG V60 ThinQ 5Gの3.5mm出力は他のスマホとレベルが違います。このままDAP代わりにしても良いレベルのポテンシャルを感じました。流石の音質です。

ちなみに統合型のSynaptics CX21986を採用するGoogle USB-C 3.5mm アダプターでは全くLG V60 ThinQ 5Gの相手になりません。何もかも。

言い換えれば、2000円くらいで手に入るUSB C to 3.5mmアダプター等のDAC如きではLG V60 ThinQ 5Gに失礼…。

ここまで触れてこなかったスピーカーに関しては、まぁ…ステレオスピーカーではあるって感想です。

中・高域は良いのですが…低域がスマホ特有のスカスカ具合で、JBLやハーマン・カードンのチューニングを受けたハイエンド機には及びません。Dolby Atmos対応止まりのステレオスピーカーに近い音質です。

基本性能ベンチマーク

Geekbench

クロスプラットフォーム対応のCPU性能を計測できるGeekbench 5では、左側のパッケージ名を原神に偽装したものでシングルコア889・マルチコア3106、右側のストア版でシングルコア905・マルチコア3152でした。

動作制御(Governor)はSnapdragon 865標準のschedule、アプリパッケージ名での動作制御変更はないようです。

最新のGeekbench 6ではシングルコア1193・マルチコア3455でした。

3DMark

クロスプラットフォーム対応のグラフィック性能を測るベンチマークの3DMark(MOD版)では、標準的なWild Lifeでスコア3751(AvgFPS:22.50)、ハイエンド向けのWild Life Extremeでスコア1107(AvgFPS:6.60)でした。

Snapdragon 865として至って普通の結果で何も言うことがないです。

PCMark for Android

Webブラウジングや2D性能など普段使いのパフォーマンスを計測するベンチマーク、PCMark for Android(work 3.0)のMOD版ではスコア11126でした。スコア10000オーバーのため普段遣いでは十二分な値です。

CPDT Benchmark

クロスプラットフォーム対応のストレージ速度を計測するベンチマーク、CPDT Benchmark(Cross Platform Disk Test)ではシーケンシャルライト(書き込み)444.54MB/s・リード(読み込み)1.1GB/sでした。

規格自体が高速なUFS 3.0なので特に言うことはありません。強いて言えばランダムリードがUFS 2.1搭載機と大差ないかな…くらいです。

UFS 3系列でも、ランダム性能すら優秀だったPOCO F4 GT(Redmi K50G)の速度を見た後だと、やはり見劣りしてしまいます…。

AnTuTu Benchmark V9

総合的なパフォーマンスを計測するベンチマーク、AnTuTu Benchmark V9.4.8では3回連続の計測で最大スコア642266、最低スコア604781、平均スコア629334でした。

バッテリー消費量は3回全て2%、温度上昇は最大2.8℃で、計測時の最大バッテリー温度は36.2℃でした。

GPUは3回全ての計測で安定しているものの、発熱した3回目ではCPUとメモリはピーク時より最大で15%近く性能が低下しています。

バッテリー温度が40℃に到達していない状態かつ”パッケージ名での制御変更がない”ことを考慮すると、単純にCPU側のスロットリングがかなり早い段階から行われているという結論になります。この辺りはスロットリングやゲーム性能の項目で確認します。

LG V60 ThinQ 5Gの結果はSnapdragon 865搭載機として低いスコアで、前に所有していたAndroid 10かつRAM6GBのAxon 10 Pro 5G(Axon 10s Pro)に全ての項目で劣っています。その変わりに温度上昇と消費電力は控えめです。

スロットリングテスト

CPU Throttling Test

CPU Throttling Testを最大負荷の100スレッド、30分間実行してCPU側が発熱しスロットリング制御が掛かった状態での性能を確認します。

30分間のテストでKryo 585のピーク性能から25%低下し、スロットリング時は大凡75%程度の性能を発揮するようです。

グラフを見れば明らかですが、スロットリング制御はかなり強めで90%台からいきなり75%台まで下降しています。その後は75%台で推移し、熱が収まって余力が生まれたのか85%台までブーストしていますが…。

Antutuで見られたCPU性能の低下は”これ”で、緩やかな制御ではなく特定の温度に達した場合、一気にクロックを低下させる挙動でした。バッテリー温度40℃以下でここまで強めに制限するのは過剰な気がします。

これでは高負荷状態が続くようなシチュエーションだと、Snapdragon 865相応のパフォーマンスは期待できないです。

3DMark Stress Test

MOD版の3DMark Wild LifeとWild Life Extreme Stress Testで、GPUパフォーマンスの持続性を計測します。

標準的なWild Life Stress Testでは最大スコア3869・最低スコア3846、バッテリー消費量71%→62%(9%消費)、温度上昇は22℃→29℃(7℃上昇)、フレームレートは15~28fpsでStability(安定性)は99.4%でした。

ハイエンド向けのWild Life Extreme Stress Testでは最大スコア1114・最低スコア1111、バッテリー消費量40%→28%(12%消費)、温度上昇は31℃→34℃(3℃上昇)、フレームレートは5~9fpsでStability(安定性)は99.7%でした。

CPU側と違いGPU側ではスロットリングがキツくないのか、Antutu同様にストレステストでも性能を維持できています。

GPUに比重を置いたコンテンツであれば大丈夫だとは思いますが…CPU・GPU共に高負荷状態になるゲーム等では3DMark Stress Testの結果ほどの安定性は発揮されないように感じてます。

ゲーム性能

Android・iOS向けFPS計測ツール「WeTest PerfDog」を使い、LG V60 ThinQ 5Gのゲームプレイ時の動作(フレームレートなど)を確認します。

今まで使用していたプロセカがオートライブでは軽量品質に固定化されてしまったので、今回は原神だけ測定。

LG UX 10.0のゲームランチャーに登録したうえで、ランチャーの設定を高解像度/高フレームでプレイします。

原神(Genshin Impact)

推奨スペックはSnapdragon 845+RAM4GBが要求されるものの、実態はSnapdragon 855クラスが必要でSoCやベンチマークだけでは動作を測れない、最重量級タイトル原神でのパフォーマンスを確認。

負荷が軽い”モンド(星落ちの谷)”と、Snapdragon 865クラスが前提の”スメール(千尋の砂漠)”にて最高画質60fpsに設定し、それぞれ15分弱プレイして動作を計測します。

リリース初期のマップ故にフレームレートの出やすいモンドでは、平均44.9fps/スムーズ度8.5/バッテリー温度平均33.9℃でした。

テイワット七国の折り返しであり、マップ構造も複雑で表現の増えたスメールでは平均38.8fps/スムーズ度10.1/バッテリー温度平均33.4℃でした。

ベンチマークやストレステストの結果がそのまま原神にも反映されており、温度上昇と共に高性能コアの動作クロックをLG UX 10.0が極端に制限しています。

低負荷なモンドですら、バッテリー温度35℃の段階で全てのCortex-A77が2GHzを下回っており、最も重要な2.84GHzのコアは1.19GHzまで低下しています。効率コアのCortex-A55は平均でも全て1.8GHzを出せていますが…力不足です。

モンド・スメール共にSnapdragon 865とは思えない結果で、Snapdragon 855(Mi 9T Pro)のスメールで平均38.6fpsと大差なく、同じSnapdragon 865のAxon 10 Pro 5Gは平均47fpsのため圧倒的に劣っています。

いくら何でもバッテリー温度40℃以下でここまでCPU側の性能を制限するのはやり過ぎです。GPUに対して使用率のバランスが取れず、低クロック状態の高性能コアがボトルネックになります。

Mi 9T ProとAxon 10 Pro 5Gの計測は発熱しやすい9月上旬の夏場であり、比較的温度面で有利な3月に計測したLG V60 ThinQ 5Gがかなり情けない結果となりました。遊べなくもないですが…最低限(45fps)すら遠いです。

原神(Genshin Impact):Ver 3.4
計測結果モンド(星落ちの谷)スメール(千尋の砂漠)
フレームレート(平均)44.9fps38.8fps
スムーズ度8.510.1
CPU温度(平均)65.7℃64.8℃
GPU温度(平均)61.4℃59.7℃
バッテリー温度(平均)33.9℃33.4℃
消費電力(平均)6783.7mW6591.1mW
ワットパフォーマンス151mW169.7mW

LG V60 ThinQ 5GはSnapdragon 865のポテンシャルを全く活かせていません。実ゲームではSnapdragon 855に毛が生えた程度です。私的にはAxon 10 Pro 5Gのようなパフォーマンスを期待していたので非常にガッカリです。

2Dや軽量な3Dゲームではマシですが…Snapdragon 865相応のゲームパフォーマンスをLG V60 ThinQ 5Gに期待しない方が良く、まだ他の865機を検討した方が使い物になります。

カメラ

ハードウェア構成とソフトウェア

「Device Info HW」から確認できたLG V60 ThinQ 5Gのハードウェア構成です。

カメラ用のセンサーは全てSamsungの物です。深度用だけ詳細不明。

メインカメラに1/1.72型のISOCELL GW1が採用されており、vivo NEX3やRealme x2 Proなどが採用したセンサーです。超広角には何故かハイエンドの望遠等に採用歴のある1/3型のISOCELL 3M5を搭載。

私が以前サブ機にしていたRealme x2 Proと似た構成で、過不足なく撮れる良い構成だったと記憶してます。

カメラセンサー
メイン 64MP(f/1.8)Samsung s5kgw1(1/1.72インチ)
超広角 13MP(f/1.9)Samsung s5k3m5(1/3インチ)
フロント 10MP(f/1.9)Samsung s5k3j1(1/3インチ)
TOF 3D 0.3MP詳細不明

ソフトウェアはLG UX独自。キャリアモデルのカスタムによりシャッター音が盛大かつOFFにできません。

最大で64MP(9248×6936)の静止画(0.5~10倍)と、8K30fps or 4K60fpsの動画撮影(1~10倍)が可能です。

作例と雑感

あくまでサンプルと雑感だと思って下さい。カメラ性能の評価は他の人に任せます。丁度良い噛ませ犬に、同じ1.72インチのIMX686を搭載したPOCO F4 GTがあるので簡単に比較。

どっちもどっちな感じですが、Snapdragonの世代によるISPとソフトウェアの差が出たのか、若干POCO F4 GTの方が綺麗な気がします。

逆に超広角だと8MPのov8856(1/4インチ)と13MPのs5k3m5(1/3インチ)差がモロに現れ、まだLG V60 ThinQ 5Gがマシな写りに。POCO F4 GTは所々塗り絵みたいになってますし、日中なのにノイズ多め。

光量のある場合はあまり差がないですが、LG V60 ThinQ 5Gは暖色寄りで少し黄色っぽくPOCO F4 GTの方が見たままに近いです。

正直カメラは他で言われているように2020年のハイエンドとしても1歩劣る印象で、良くて1/1.72型のミドルハイ辺りと同じくらい、下手したら1/1.55型を採用した最近のミドルには劣るかもしれません。ローエンドよりは断然良い写りですが…。

まとめ:期待したSnapdragon 865の端末ではなかった

良い悪い
・そこそこ使いやすいOne UI風のLG UX 10.0
・2020年モデルながらAndroid 12に対応
・MIL規格準拠の高耐久を謳う頑丈なボディ
・IP68の防水・防塵とNFC(FeliCa)対応
・ハイエンドモデルながらmicroSDカード対応
・6.8インチでフラットなディスプレイ
・LGディスプレイ製の優秀な品質のPOLED
・USB 3.1 Gen 1対応のType-Cポート搭載
・最大25WのUSB PD 3.0(PPS)やQC/Qi充電
・5000mAhの大容量バッテリー搭載
・良好な画面内指紋認証
・ステレオスピーカー&ステレオミニジャック
・DTS:X SurroundやHi-Res Audioに対応
・ESS ES9219PをQuad構成で搭載
・Hi-Fi Quad DAC出力時の音が素晴らしい
・腐っても普段使い”では”快適な性能
・テッカテカで反射が酷い&指紋等も目立つ
・デカデカと配置された「docomo 5G」ロゴがダサい
・アシスタントボタンが殆ど役に立たない
・docomo&LG製の消せないクソアプリが多すぎる
・スクショ&カメラのシャッター音が消せない
・ディスプレイのベゼルが太い
・2020年のハイエンドモデルなのに60Hz固定
・WidevineがL3
・顔認証に非対応
・過剰レベルでCPU側のスロットリング制御が強い
・Snapdragon 865相応の性能を維持できない
・ゲームでの実性能はSD855に毛が生えた程度

ざっと良い・悪いを箇条書きしただけでも非常に困った1台で、とても良いが…とても悪いです。

優秀な部分を言えば、ESS ES9219Pによる3.5mmステレオミニジャック出力は素晴らしく、全てのスマホの中でもトップクラスの音質です。6.8インチでフラットかつLGディスプレイ製のPOLEDも60Hzとベゼル以外良いです。

Android 12ベースのLG UX 10.0もそこそこ使いやすくIP68の防水・防塵とNFC(FeliCa)、USB PD 3.0(PPS)と5000mAhのバッテリーに加え、良好な画面内指紋認証も搭載しmicroSDカードにも対応。

UFS 3.0とLPDDR5のRAM8GB、Snapdragon 865を採用しているため、普段使い”では”快適な部分を多く有しています。過度に性能を求めないのであれば今でも悪くないかもしれません。

反面、普段使い以外でSnapdragon 865相応の性能をLG V60 ThinQ 5Gに期待する場合は”非常にガッカリ”します。

過剰レベルでCPU側のスロットリング制御が強く、バッテリー温度35℃の段階で全てのCortex-A77が2GHzを下回るため、高負荷状態が続いたうえでCPU性能が要求されるシチュエーションだと、Snapdragon 865相応の性能を維持できません。

ベンチマークテストの段階でその傾向が見受けられ、原神のような3Dゲームでの実性能はSnapdragon 855に毛が生えた程度でした。同じSnapdragon 865搭載モデルから大きく劣り、控えめに言って”SD865の面汚し”です。

性能以外でも悪い面を言い出したら長くなりますが…特にdocomo&LG製の”通常では”消せないクソアプリが多すぎる点と、LGディスプレイ製の優秀な6.8インチディスプレイに対して”Widevine L3”はクソです。

デカデカと配置された「docomo 5G」ロゴもダサいですし、スクショ&カメラのシャッター音も消せず、キャリアモデルなので何かと魔改造という名の改悪がされています。せめてau&SoftBankならマシだったかもしれません。

Snapdragon 865相応の性能を期待し、値段も安く欲しいと欲張って1.8万円に飛びついた私も悪いのですが…LG V60 ThinQ 5GにはAxon 10 Pro 5Gのような性能を期待していたので、ガッカリ&買って後悔してます。

XDAに報告のある海外版と違ってdocomo版はEDLモードやブートローダーに入れません。加えて公式に対応していたLGのBootloader Unlockサービスは既に終了しており、自分でゴニョゴニョ…がほぼできません。

LG V60 ThinQ 5Gのオーディオ周りとディスプレイ品質はとても気に入ったのですが”それ”を求めていたわけではなく過去に同じ道を辿った端末達と同じで、使い道が特にないのでLG V60 ThinQ 5Gは売却しました。