新しい玩具兼噛ませ犬にSnapdragon 8 Gen 1が欲しかったので、搭載機では安価な「Xiaomi POCO F4 GT」をiijmioのセール価格で買いました。
提供を受けたレビュアーが”コスパ”を連呼する一方で、一部からはゲームに向かない・発熱や性能に問題ありと言われており、その比率が7:3くらいなので誰の情報を参考にして良いのか正直…分かりません。
誰もアップデート後にレビューしていなかったり色々謎なので、それらを確かめるためにレビューします。
この記事はAndroid 13ベースのMIUI Global 14.0.1.0(TLJMIXM)適用後のPOCO F4 GTを用いて作成しています。
スペック・仕様
Xiaomi PCCO F4 GT(21121210G) | |
OS | MIUI 13 for POCO(Android 12ベース) |
SoC | Snapdragon 8 Gen 1(Samsung 4nm) |
RAM | 8/12GB(LPDDR5) |
ストレージ | 128/256GB(UFS 3.1) |
ディスプレイ | 6.67インチ AMOLED (1080×2400/60・120Hz/Gorilla Glass Victus) |
サイズ | 162.5×76.7×8.5mm |
重さ | 210g |
バッテリー | 4700mAh(独自規格120W:PD/QC 3.0対応) |
カメラ | 64MP(メイン:Sony IMX686) 8MP(超広角:OmniVision ov8856) 2MP(マクロ:GalaxyCore gc02m1) 20MP(フロント:Sony IMX596) |
インターフェース | USB Type-C(USB 2.0) nanoSIM×2 |
オーディオ | クアッドステレオスピーカー(CS35L41) Dolby Atmos Hi-Res Audio(~192000Hz) |
接続規格 | Wi-Fi 6E(802.11a/b/g/n/ac/ax:2.4/5/6GHz) Bluetooth 5.2 NFC |
セキュリティ | 側面指紋認証/顔認証 |
備考 | POCO F4 GT=Redmi K50G(K50 电竞版)のグローバル版 XiaomiのPOCOブランドとしては日本初投入 IP53程度の防水・防塵に対応している模様(非公表) |
開封・内容物
パッケージデザインはカーボン風のブラックとPOCOのイメージカラーであるイエローの配色。内箱は完全にイエローです。白パッケージの多いメインブランドからすると少し凝ってますね。


付属品はXiaomiらしく、購入直後でも使えるようにフィルムやケース、ACアダプターにケーブル等の一式が揃っています。基本的にアクセサリー類を別途用意しなくて済むので有り難いですね。

パッケージ内容 |
・ACアダプター(3V3A~20V6A:最大120W) ・USB Type-A to Cケーブル(L字型) ・USB Type-C to 3.5mm変換アダプター(アナログ式) ・TPUクリアケース(USBコネクタカバー”無し”) ・TPU保護フィルム(貼付け済み) ・SIMピン ・クイックスタートガイドなどのマニュアル類 |
外観
派手なサイバーイエローは嫌なので、落ち着いたステルスブラックが欲しかったのですが…iijmioの在庫が無かったため仕方なくナイトシルバーにしました。
Redmi K50GのAMG F1 冠军や冰斩版ほど格好良くは無いですが、グローバルのPOCO F4 GTには存在しないカラバリなので諦めるしかないです。ブルー(冰斩)ならまだしも何故イエローを持ってきたのか理解に苦しみます。
ただ実物は思っていたより悪くはなく、背面は指紋が目立ちにくいマットな加工が施されたガラス製、側面はアルミフレームかつややラウンドしたカーブ形状を採用していて比較的持ちやすかったです。

背面と側面がシルバーで統一されマット加工のおかげでギラギラしすぎていないので、商品写真やレビュー系動画などで見るよりかは、実物を手に取ってみると思いの外良かったです。

まぁ…デザインは良くも悪くも無い印象。コンセプトは「夢のスポーツカー」らしいので万人受けはしないでしょうね。
ボタン類は独特な配置となっており、正面右側にPOCO F4 GTの特徴であるマグネット式ポップアップトリガーが2つ、側面指紋認証を兼ねた電源キーが配置されています。
左側にはSIMスロット、ボリュームキー、横持ち向けに最適化されたマイクが配置されています。


電源とボリュームが左右別ということでOPPO系(RealmeやOnePlus)のソレです。慣れないとやや紛らわしいです。
本体下部にスピーカー×2、USB Type-Cポート(USB 2.0)とマイク、上部にもスピーカー×2、マイクと赤外線のIRブラスターが備わっています。


スピーカーは合計4つでそれぞれがウーファー×2とツィーター×2の役割になっています。
SIMスロットは左側のボリュームキー上にあり、裏表にnanoSIMカードを装着可能です。

POCO F4 GTの重さは概ね公称値の210gに近い212.6gでした。

付属のクリアケースを装着した場合は231.4gで、それなりに質量を感じる重さです。

ソフトウェア
グローバル準拠のMIUI for POCO
POCO F4 GTは、出荷状態ではAndroid 12ベースのMIUI 13 for POCOをプリインストールしています。
型番やコードネーム含めてグローバルと全く同じのため、国内版のアップデートもグローバル準拠で対応しており、POCO F4 GT(ingres)向けのMIUI 14がリリースされています。


For POCOとなっていますが、ランチャーがPOCOランチャーに変更されたこととPOCO系のアプリが一部追加された以外は普通のMIUIと何ら変わらないです。
Android 13ベースになったところで使い勝手の悪さは相変わらず。12ベースのMIUI 13から劇的な変更はないです。




MIUIでサードパーティ製ランチャーに変更するとジェスチャーを有効化できないのも、MIUI 12.5~14と使って来ましたが…変更する気配無し。


Fluid Navigation Gesturesをぶちこんだところでって話なので、雷軍は好きでもMIUIは嫌いです。
慣れましたが…MIUIで使うために設定をする度に毎回これなので、またこれかってうんざりです。BLUに168時間掛かるのも他社ではそんな時間は不要、こんなことをしてるのはXiaomiくらいです。
とはいえハードウェアは良いものを比較的安価に出してくれるし、Xiaomi自体の技術力は高いので購入候補には入ってくるんですけどね。
ブロートウェアも多いので、何時も通り「ADB App Control」でプリインアプリの大半を駆除してます。

MIUIの機能を残しながら普段使いするなら、euROM焼くとかwoobox入れないとキツいです。
ハードウェア
DisplayMate A+評価の6.67インチ AMOLED
POCO F4 GTは、6.67インチでDisplayMate A+評価のAMOLEDディスプレイを採用しています。
パンチホール型インカメラ搭載のフラットタイプで、ベゼルやインカメラは極小というわけではありません。

DisplayMate A+評価で10bit(10億色)のAMOLEDディスプレイのため発色や輝度は良く鮮やかで、Samsung製E4材のXiaomi Mi 11i同様に品質は文句の言いようがないです。
可変式ではなく60・120Hz固定のリフレッシュレート、タッチサンプリングレートは480Hz、アスペクト比は20:9、PPIは395、HDR10+やDolbyVisionにも対応しているようです。


色彩設定も自由度が高く、RGBや色温度も調整可能です。



ビデオフレームを補間して滑らかに再生するMEMCやAIによるHDR補正、アップスケール補正機能もあり、ディスプレイ品質だけでなく機能性も充実しています。



Xiaomi Mi 11iのマクロカメラをGCamでブーストした疑似顕微鏡カメラで、POCO F4 GTのディスプレイを撮影しました。

配列はSamsung Display(SDC)かTCL China Star Optoelectronics Technology(TCL CSOT)っぽく見えます。
Samsung製だった場合はカタログスペック至上主義のXiaomiがアピールしない訳がないので…多分TCL製かと。
POCO F4 GTのWidevineはL1でした。高画質な動画ストリーミング再生が可能です。

快適な生体認証
POCO F4 GTは側面指紋認証とインカメラを利用した顔認証に対応しています。
認証の精度・速度どちらも高速で失敗が少ないので生体認証に不満はないです。
高速なXiaomi Hyper Charge 120W(ただし…)
POCO F4 GTはXiaomi独自充電規格のXiaomi Hyper Charge 120W(Mi Turbo Charge)に対応しており、純正のACアダプターとケーブルが付属しています。
120Wの高出力に対応するACアダプターは大きさも然る事乍ら、重さも単体で180gオーバー…とスマホ1台分くらいあります。出力は定格時5V3A、高速時3.6~20V3~6Aに対応しています。


普段使用しているUSB Type-Cチェッカー(RT-TC5VABK)では100Wまでしか計測できない上に、間に中継させると電力供給が遮断されて確認の”か”の字もなかったので、代替にワットモニター(TAP-TST8N)で計測しました。
純正のACアダプターとケーブルでPOCO F4 GTを充電したところ”120W MAX”と表示され、ワットモニター読みで110Wの出力が確認できました。

POCO F4 GTは4700mAhのバッテリー容量を2350mAhデュアルセル構成で実現しているので、ある意味では60W×2みたいな感じです。
USB PDとPD 3.0(PPS)、USB BC1.2対応のPixel 6を充電してみたところ、USB Standard-Aかつ独自出力のACアダプターからPixel 6最大の21Wが出力され”急速充電中”判定になりました。

ポートがType-AでありながらXiaomiに魔改造され120Wを出力するこの充電器は、どうやら接続機器次第ではUSB PDを出力をするみたいです。
ワットモニター読みだと21WなのでPPSっぽくも見えますが、≒出力ではなくケーブルを挟んだ電力損失もあるので恐らくはUSB PDだと思います。どちらにしろUSB Type-Aから20W近いUSB PDが出てるのは怪しいのですが…。
手持ちの機器を色々ゴニョゴニョしていたら、何故かUSB Type-Aチェッカー(RT-USBVAC7QC)と「Anker PowerCore Fusion 10000」のType-A出力+POCO F4 GTの付属ケーブルだと出力が見れたので確認。
5V2.4A=12Wが上限値のPowerCore Fusion 10000からPixel 6に何故か5.136V2.636A=約13.5Wが出力され、内部の判定的にUSB PD(5V3A)になったのか”急速充電中”判定になりました。

どう考えても普通の挙動ではないです。付属のUSBケーブルを他のACアダプターで使うのは問題ありかもです。
一応、色々とUSB充電周りが意味不明な純正ACアダプターとケーブルの端子部分を(もの好きのために)撮影。

まぁ…120Wを出力可能な時点で普通のUSB 2.0ではないことは確かですし、気にしたら負けかもしれません。
テュフラインランド認証で安全性もアピールしているので実使用には問題ないですし、120Wの速度は一般的なUSB充電と比べて圧倒的なので便利ではあります。
これがUSB PDを吐き出している意味を理解できる方は気に留めておいて下さい。気にし過ぎかもしれませんが。
ユニークなマグネット式ポップアップトリガー
POCO F4 GT(Redmi K50G)の特徴として、収納可能なマグネット式ポップアップトリガーを搭載しています。


MIUIのゲームターボからポップアップトリガーのゲームへの割り当て設定が可能で、対応するゲームで物理L・Rボタンとして使用できます。



ゲームプレイ以外でもMIUIの追加設定からトリガー起動時の効果音やアニメーションを変更できる他、それぞれに2回押しと長押し時にカメラやサイレントモードを起動させるボタンとして設定できます。



ユニークな機能ではありますが、あったからといってXiaomiが「初心者はプロに、プロは神レベルになる」と言っていたほどの物ではありません。ゲームにしかほぼ使えない割に物理的な格納式にしたせいで寧ろ邪魔です。
特にクロスなどでメンテナンスする際に、トリガーがカシャカシャ稼働して鬱陶しく感じました。
オーディオ
機能的なオーディオエフェクト
PCCO F4 GTはサウンド効果としてDolby Atmosに対応しています。
Dolbyエフェクトとしてプリセットやグラフィックイコライザーから音質を調整可能で、他社の端末で有りがちなDolby Atmosが強制的に有効化されてOFFにできないといったこともありません。


Dolby Atmosとは排他利用かつ3.5mmステレオ出力限定ですが、Xiaomi独自のMiサウンドにも対応しておりイヤホンに合わせた調整やイコライザー設定が可能な他、音の好みに合わせたイコライザーカーブを作成可能なパーソナライズサウンド機能も使用できます。



レイテンシーテスト
「Audio Latency Test App」でスピーカー、「ヘッドフォンディレイテスト」で3.5mmステレオミニジャックの出力レイテンシーを計測しました。(Dolby AtmosなどのオーディオエフェクトはOFF、付属のアダプターを使用)
スピーカーではレイテンシー50ms、バッファサイズ192、3.5mmステレオミニジャックでは大体20ms程度でした。


過去の計測結果ではXiaomi Mi 11iが近く、Mi 11iより応答速度が若干高速でした。
オーディオレイテンシーは普通で使用する上で不満を感じることはほぼないです。
POCO F4 GTのハードウェア
POCO F4 GTはディスクリートDACを搭載しないため、Snapdragon 8 Gen 1に統合されたQualcomm Aqsticオーディオコーデック「WCD9385」を使用します。
ハードウェアレベルでカスタムできるプレイヤー「Neutron Music Player」で、POCO F4 GTのハードウェアを確認したところ、デフォルト設定ではスピーカー・3.5mmステレオミニジャック出力共に44100Hz(24bit)でした。


ドライバー設定からHi-Res系の出力を許可すると、スピーカー・3.5mmステレオミニジャック出力共に44100Hz~192000Hzまで選択可能になりました。



表面上は対応していても、再生しようとするとエラーになる所謂”見掛けだけの周波数対応”では無いことを確認します。
ネイティブ192000Hz(24bit)にアプコンしたWav音源で再生テストをしたところ、しっかり再生可能でした。

Qualcomm WCD9385のデータシート上では384000Hz(32bit)までサポートしていますが、POCO F4 GTでは192000Hzまで対応のようです。
また「Device Info HW」を確認してみると、Xperia 1 Ⅱ等に採用されているCirrus Logic製のモバイル向けD級アンプ「CS35L41」をPOCO F4 GTは搭載しているようです。

恐らくL・Rにそれぞれ1基ずつ(デュアルモノラル?)、そこから左右対象のウーファー×2とツィーター×2を鳴らしている構成だと思います。
音の好みや良し悪しの判断は人によるので、私のAndroidレビューではオーディオ製品ほど言及していません。
ただ、軽く触れておくとPOCO F4 GTのクアッドステレオスピーカーはかなり良く、低域が”スマホにしては”しっかり鳴りつつ、役割が異なる構成のお陰で中・高域と混ざってぐちゃぐちゃにならないので、私が今まで使用したAndroid端末の中では1・2を争うくらいの良さでした。
メイン機のPixel 6では音のバランスや定位感はまるで相手にならず、Mi 11iや過去に所有して良好だったRealme x2 Proでも総合的な音の良し悪しの判断だけならPOCO F4 GTを推すかもしれません。
モバイル向けとはいえD級アンプを搭載し、物理的に4基も役割の異なるスピーカーが搭載されているのは伊達ではないと感じました。ディスプレイと並んでスピーカーはPOCO F4 GTの少ない強みです。
3.5mm出力は所詮、WCD9385からアナログ式のアダプターで変換しているだけなので普通です。
基本性能ベンチマーク
ベンチマーク内容を少し改良し、基本性能とスロットリングテストに分けました。
AntutuとCPDT以外のアプリはストア配布版だと実用性能の判断材料になりにくいため、Geekbenchは開発者のJohn Poole氏が原神に偽装したもの。
3DMark・PCMarkはAndroPlusさんによってMOD化されたものを使用します。
Geekbench 5


クロスプラットフォーム対応のCPU性能を計測できるGeekbench 5では、左側のパッケージ名を原神に偽装したものでシングルコア1210・マルチコア3602、右側のストア版でシングルコア1241・マルチコア3554でした。
CPU性能はSnapdragon 888(Xiaomi Mi 11i)からシングルで約10%程度向上していますが、マルチは3%弱…と誤差範囲でしかなく888に毛が生えた程度で、Snapdragon 888 PlusやDimensity 8100搭載機には劣る結果です。
偽装版の方がスコアが高いためパッケージ名での大幅な挙動変更はされていないように見えます。
3DMark


クロスプラットフォーム対応のグラフィック性能を測るベンチマークの3DMarkでは、標準的なWild Lifeでスコア8346(AvgFPS:50)、ハイエンド向けのWild Life Extremeでスコア2134(AvgFPS:12.80)でした。
Snapdragon 8 Gen 1でもWild Lifeでスコア10000オーバーする機種が存在しているので、POCO F4 GTは8 Gen 1機にしては少し低いです。
PCMark for Android

Webブラウジングや2D性能など普段使いのパフォーマンスを計測するベンチマーク、PCMark for Android(work 3.0)ではスコア14465でした。Snapdragon 8 Gen 1機にしては妙にスコアが高い気がします。
スコア12839のSnapdragon 888(Xiaomi Mi 11i)からは約12%向上しました。ただ、2Dや日常に必要な性能で体感できるほどの差ではないです。
CPDT Benchmark

クロスプラットフォーム対応のストレージ速度を計測するベンチマーク、CPDT Benchmark(Cross Platform Disk Test)ではシーケンシャルライト(書き込み)589.30MB/s・リード(読み込み)1.44GB/sでした。
UFS 3.1規格を採用するハイエンドモデルらしく高速な結果で、ランダム性能もかなり良くライトで40MB/sに迫る38.52MB/s、リードでも34.21MB/sを叩き出しました。
シーケンシャル・ランダム共にSATA SSD超え、Memory copy性能もLPDDR5ではやや速めの15.61GB/s…と、メモリ・ストレージ性能はハイエンドとして妥当で実用的な結果です。IO Turbo技術の恩恵もあると思います。
AnTuTu Benchmark V9



総合的なパフォーマンスを計測するベンチマーク、AnTuTu Benchmark V9.4.8では、3回連続の計測で最大スコア990427、最低スコア931730、平均スコア958344でした。
バッテリー消費量は最大7%、温度上昇は最大9.9℃で、計測時の最大バッテリー温度は42.1℃でした。
ちなみにSnapdragon 8 Gen 1が出た当初から無駄にアピールしていた、AnTuTu Benchmarkでのスコア100万オーバーを、一応POCO F4 GTでも拝むことは可能です。
パフォーマンスモードかつメモリ増設OFF、ゲームターボ上のパフォーマンスの最適化を無効化し、端末の温度をかなり低い状態(バッテリー温度読みで10℃以下)にすることで、スコア1032092を計測できました。

スロットリングテスト
CPU Throttling Test
CPU Throttling Testを最大負荷の100スレッド、15分間実行してCPU側の発熱時の性能具合を確認。


POCO F4 GT(MIUI Global 14.0.1.0)はピーク時の性能から25%低下するようです。
スロットリング時でもSnapdragon 8 Gen 1の性能が75%程度は発揮されると解釈するべきなのか、25%も性能が低下すると解釈するべきかは微妙な所です。失敗作と酷評される8 Gen 1であると考慮するなら前者ですが…。
他のレビュアーさんのPOCO F4 GTでCPU Throttling Testの結果は時期とファームウェアが異なるので、厳密な比較はできませんが…50~60%台の結果が多かったことを考えれば、Xiaomiはそれなりに改善させたのだと思います。
3DMark Stress Test
MOD版の3DMark Wild LifeとWild Life Extreme Stress Testで、GPUパフォーマンスの持続性を計測します。


標準的なWild Life Stress Testでは最大スコア8338・最低スコア7849、バッテリー消費量50%→30%(20%消費)、温度上昇は29℃→45℃(16℃上昇)、フレームレートは30~62fpsでStability(安定性)は94.1%でした。
スコアがSnapdragon 8 Gen 1にしては性能を抑えられている代わりに安定性は高く、空冷ファンでも装備しない限り大方80%台のところ、45℃まで温度上昇したとはいえPOCO F4 GTは90%以上を保てています。
最低時のスコアでも7849なのでSnapdragon 888の約1.4~1.5倍です。その性能向上分、消費電力も増加し20%も消費してしまいました。
Snapdragon 888(Xiaomi Mi 11i)比で最低スコアをバッテリーの消費量で割ってみると、ワットパフォーマンスは微増するどころか悪化しています。性能は1.4倍ですが消費電力は2倍なので当然です。


ハイエンド向けのWild Life Extreme Stress Testでは最大スコア2155・最低スコア2149、バッテリー消費量82%→67%(15%消費)、温度上昇は31℃→43℃(12℃上昇)、フレームレートは10~16fpsでStability(安定性)は99.7%でした。
Wild Life Extremeでは重量級故にフレームレートが下がるため、GPU使用率に反してWild Lifeより温度や消費電力が下がった結果になりました。31℃で開始して最大43℃なので制御が甘く爆熱化するという訳でもなさそうです。
CPU Throttling Test同様、POCO F4 GTは初期ファームウェアに比べてMIUI 14でパフォーマンスの安定性がかなり向上しているようです。
少なくともSnapdragon 8 Gen 1搭載機の中ではかなりマシな安定性を有しています。
ただやはり評判通り8 Gen 1の消費電力は888から改善するどころか悪化していて、POCO F4 GTの電池持ちが並程度なのも納得です。
ゲーム性能
Android・iOS向けFPS計測ツール「WeTest PerfDog」を使い、POCO F4 GTのゲームプレイ時の動作(フレームレートなど)を確認します。
各ゲームプレイの記録をYouTubeに保管してあり、計測結果のリンクから視聴可能です。良ければどうぞ。(あまり実際のプレイ映像は重要視されていない様子なので埋め込みから付与に変更しました…)
普段であれば前置きはここで終わりなのですが、POCO F4 GTはやや特殊な事例に遭遇したので記録として残します。
あとPOCO F4 GTに限らず、結構Xiaomi端末のレビューで勘違いしている人達が居ますが…ゲームターボから確認できるfps値は実際のゲーム動作とは別物で無意味な値です。

最低限、MIUIの開発者向けオプション内にあるFrame Rate Monitor Toolsくらいは使って下さい…。
POCO F4 GTがゲーム性能を発揮するのは特定条件下
POCO F4 GTのゲーム性能は評価が割れています。
特に原神では発熱が原因で性能が発揮されないと言われ、Golden Reviewer氏の計測では”No More Snapdragon 8 Gen1 Please”とまで書かれる始末。
その一方で、リネーム元のRedmi K50Gは原神で50fpsを超える動作がWekiHome氏やAndroPlusさんによって記録されている等…かなり不可解で奇妙な部分があります。
Xiaomi端末では「バッテリーをパフォーマンスモードにしないと性能が制限される」ことがあったので、パフォーマンスモードで計測したところ、Snapdragon 8 Gen 1とは思えない低クロックで動作しました。

非root状態かつ計測中だったので、CPUクロックしかリアルタイムで確認していませんが…全コア1.2GHz以下でしか動作していません…。恐らく低クロックで高使用率になるCPUに対してGPUが遊んでいる状態です。
パフォーマンスモードで15分弱計測したところ、スメールにて平均35.2fpsでSnapdragon 855(Mi 9T Pro)の平均38.6fpsにすら劣る無様な結果を叩き出しました。

Golden Reviewer氏の結果よりも更に低い平均値で、Redmi K50Gの発表会で「原神を30分、平均57.2fpsでプレイできる」とアピールしていた結果には程遠いです。
発熱によるスロットリング制御であるならば理解できますが、CPU・GPU共に60℃以下、バッテリー温度34℃の状態では明らかに可笑しい挙動です。
色々調べて動作変更したところ、”ゲームターボのパフォーマンスの最適化”と”バッテリーモード/バランス”に設定することで、ゲーム時も性能を発揮する挙動になりました。

制限されていたクロックが上昇したのか、動作中のCPU・GPU内部温度は10℃近く上昇。本来はこれが正常です。

そのため、Xiaomi端末ですが”パフォーマンスの最適化”と”バッテリーモード/バランス”の状態で計測テストをしています。 (こういう部分もMIUIが原因だったりする…)
プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat.初音ミク
まずは推奨スペックが、Android 8.0以降かつSnapdragon 845+RAM4GBに引き上げられたプロセカをテスト。
2DMV+120fpsの「マシンガンポエムドール」と、3DMV(高品質)+120fpsの「限りなく灰色へ」をEXPERT・オートライブでノーツ速度12.0に設定し、それぞれ5回実行しました。


2Dで動作する「マシンガンポエムドール」ではロードも含めた全体で、平均109.5fps/スムーズ度3.7/バッテリー温度平均28.5℃でした。

終盤5回目の楽曲プレイ時では平均121.5fpsで動作しており、2DではPOCO F4 GTの動作上限である120fpsに張り付いています。スムーズ度は0.0かつジャンクも0.0で一切処理落ちがなく安定しています。

3DMVでは比較的重い「限りなく灰色へ」ではロードも含めた全体で、平均100.9fps/スムーズ度6.8/バッテリー温度平均36.9℃でした。

終盤5回目の楽曲プレイ時では120fps+3Dの負荷による発熱で性能がやや低下し、フレームレートがやや安定せず平均109.4fps動作していました。とはいえジャンクは発生せず、実機でfpsの低下を感じることはなかったです。

プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat.初音ミク:Ver 2.4.0 | ||
計測結果 | 「マシンガンポエムドール」 2DMV+120fps | 「限りなく灰色へ」 3DMV(高品質)+120fps |
フレームレート(平均) | 109.5fps | 100.9fps |
フレームレート(5回目) | 121.5fps | 109.4fps |
スムーズ度 | 3.7 | 6.8 |
CPU温度(平均) | 49.4℃ | 73.5℃ |
GPU温度(平均) | 44.4℃ | 69.6℃ |
バッテリー温度(平均) | 28.5℃ | 36.9℃ |
原神(Genshin Impact)
推奨スペックはSnapdragon 845+RAM4GBが要求されるものの、実態はSnapdragon 855クラスが必要で、SoCだけでは動作を測れない最重量級タイトル原神でのパフォーマンスを確認。
最近では「原神も余裕」とレビュアーが嘯く原因の負荷が軽い”モンド(星落ちの谷)”と、Snapdragon 865と同等以上が前提の”スメール(千尋の砂漠)”にて最高画質60fpsに設定し、それぞれ15分弱プレイして動作を計測します。


リリース初期のマップ故にフレームレートの出やすいモンドでは、他のレビュアーに合わせてかなり適当にプレイした結果、平均50.1fps/スムーズ度5/バッテリー温度平均29.3℃でした。

Wild Life Stress Testで得られた結果のように”モンドでは”POCO F4 GTでも、平均50fpsでそれなりに安定した動作をしています。
4860mm2のベイパーチャンバーやグラファイトなどの冷却構造とパフォーマンスの最適化によって動作中の温度も抑えられており、最大バッテリー温度は33℃程度までしか”モンドでは”上昇しませんでした。
テイワット七国の折り返しであり、マップ構造も複雑で表現の増えたスメールで普段通りにプレイしたところ、平均46.6fps/スムーズ度7.2/バッテリー温度平均33.6℃でした。

スメールでは辛うじて45fpsを上回ったものの、モンド程スムーズには動作しませんでした。
とはいえ最高画質60fpsのスメールで平均45fps動作は悪いわけではなく、ファンレスかつSnapdragon 8 Gen 1でありながら最大バッテリー温度35℃に抑え込み、割りと遊べる程度に動作するのは比較的良好と言えます。
前述の性能が出ていない状態との比較では同端末であるにも関わらず、35.2fpsと46.6fpsで約1.3倍も発揮される性能が違っていました。

性能が発揮されないままでPOCO F4 GTを評価した場合は「無様な安いだけのなんちゃってゲーミングスマホ」という感想ですが…それなりに性能が出た上で、比較的Snapdragon 8 Gen 1の発熱を抑え込めているならば酷評する必要はありません。
まぁ…発表会の平均57.2fpsやQualcommがSnapdragon 8 Gen 1のプロト機で60fps安定!と言っていたのを結局、POCO F4 GTでは拝めませんでしたが。
原神(Genshin Impact):Ver 3.4 | ||
計測結果 | モンド(星落ちの谷) | スメール(千尋の砂漠) |
フレームレート(平均) | 50.1fps | 46.6fps |
スムーズ度 | 5 | 7.2 |
CPU温度(平均) | 60.7℃ | 68.3℃ |
GPU温度(平均) | 56.6℃ | 62.9℃ |
バッテリー温度(平均) | 29.3℃ | 33.6℃ |
カメラ
ハードウェア構成とソフトウェア
「Device Info HW」から確認できたPOCO F4 GTのハードウェア構成です。

ゲーミング方面を強化したモデルながらメインカメラにはRedmi K40 ProやMi Note 10 Liteに採用されていた1.72型のIMX686を搭載しており、カメラ構成的には”よくある普通”といった感じです。
カメラ | センサー |
メイン 64MP(f/1.9) | Sony IMX686(1/1.72インチ) |
超広角 8MP(f/2.2) | OmniVision ov8856(1/4インチ) |
マクロ 2MP(f/2.4) | GalaxyCore gc02m1(1/5インチ) |
フロント 20MP(f/2.4) | Sony IMX596(詳細不明) |
カメラソフトウェアはいつものMIUIカメラです。地域を日本以外にすればカメラのシャッター音をOFFにできます。



作例と雑感
最初からPOCO F4 GTのカメラはどうでも良かったので何枚か載せるだけにします。あくまでサンプルと雑感だと思って下さい。カメラ性能の評価は他の人に任せます。
一応でも1.72型のIMX686なので、光量があればメインカメラは普通に使えて意外と綺麗に写ります。

ミドル端末よりは1つ上、ミドルハイ辺りがイメージに近いです。特化機や各社の旗艦級には及びません。
ISOCELL HM2(1.52型)+GCamのMi 11iと簡単に比較。
POCO F4 GTはMIUIカメラのHDRが効いてメリハリのある感じ、Mi 11iはGCamでPixel風の目で見た色合いに近い感じです。両者勝るとも劣らない普通に見れる写りです。


低照度の撮影でもそこそこ解像感のある写真が撮れます。色合いはやはりMi 11i+GCamが自然、ただ無理やり感がありPOCO F4 GTよりノイズがある印象。ゲーミング系のモデルでこれくらい写るなら悪くないです。


まぁ…使えるのはメインだけで、超広角とマクロは何故付けたのか疑問レベルで悪いです。
特にマクロカメラは、ローエンドやミドルクラスに採用例が多い2MPのgc02m1(1/5型)なので…5MPのISOCELL 5E9(1/5型)をテレマクロに採用するMi 11iにすら遠く及ばない画質です。付いてるだけのおまけ。


何故、各社カタログスペックだけのトリプルカメラに拘るのか謎です。”とりあえず付けとけ”感が凄い。
マーケティングや性能合戦で有利なのか知りませんが…写りの悪いカメラを無駄に搭載するなら思い切ってメインカメラだけ採用し、その分コストも削る方向に出来ないのかと毎回思います。
まとめ:安く買えたらラッキー、ディスプレイとスピーカー”は”優秀な1台

良い | 悪い |
・付属品が最初から一式揃っていて実用的 ・マット加工の背面ガラス&側面アルミフレーム ・DisplayMate A+評価の120Hz対応AMOLED ・フラットディスプレイ ・高速で快適に使える生体認証 ・独自規格の高速な120WとPD/QC 3.0充電に対応 ・左右対称で音の良いクアッドステレオスピーカー ・Dolby AtmosとHi-Res Audio対応 ・Cirrus Logic製のD級アンプCS35L41を搭載 ・ランダム性能も優秀なUFS 3.1ストレージ ・Snapdragon 8 Gen 1搭載機ではマシな安定性 ・冷却構造とMIUIの最適化により比較的低発熱 | ・MIUI&何故か性能発揮に条件がある ・人を選ぶ万人受けはしないデザイン ・付属のACアダプターとケーブルが意味不明 ・USB 2.0(フラッグシップキラーなのに) ・本体にイヤホンジャック無し(ゲーミングなのに) ・Snapdragon 8 Gen 1なので電力効率は悪い |
相変わらずMIUI含めてXiaomiらしい斜め上を行く部分が色々あり、癖も強め、デザインも相まって総合的に見ても万人受けはまずしません。とはいえ、全体的に事前の印象よりは案外悪くなかったです。
特にDisplayMate A+評価のAMOLEDディスプレイとCirrus Logic製のD級アンプCS35L41を搭載したクアッドステレオスピーカーは中々に優秀です。
またSnapdragon 8 Gen 1なりの性能はあり、安定性と冷却性能もMIUI 14だと比較的マシだったので意外でした。
肝心のゲーム性能もそこそこ発揮されることは分かりましたが…あそこまで辿り着くのが面倒でしたし、アピールしていたほど優れた性能という訳でもありません。
プロセカは快適に動作するのが当然、原神がモンドで平均50fps以上動作するのはもう普通のことで、肝心の重いスメールではあまり振るわず平均45fps程度。Snapdragon 888機でも近い結果は出せます。
酷評するほど悪くもないですが…ゲーミングという割には格別に良くもないです。ハイエンド端末としては普通。
Antutuがスコア100万だからと言って実際にゲームでその性能が反映される訳では無いですし、POCO F4 GTでAntutuしか計測しないくせに”コスパ”を連呼する人達は、その辺りを履き違えていると思います。
価格にしてはカタログスペックが良いのは事実ですが…ことがゲームであればカタログスペックだけで判断して良いほど単純なものではないです。
セール等の4~5万円台で安く買えるなら弄り倒す玩具としては悪くないですが、どうしても欲しい理由がないなら今更、Samsung製Snapdragon 8 Gen 1のPOCO F4 GTを進んで購入する理由はありません。
というわけで「あなたは誰の評価を信じますか?」と題して、私がPOCO F4 GTをレビューした内容は以上です。
私はセール価格の4万円弱で買えたので、ブートローダーアンロック後に玩具&噛ませ犬として使います。
(追記:①性能調整による原神動作の改善/②噛ませ犬としてボコボコにされる)
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